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~星ワタリ篇~【夢現八光年】

「よう、兄ちゃん。 金貸してくんね?」

短髪にピアス、タンクトップにジーンズという風貌の、いかにもガラの悪そうな筋肉質の大男が目の前に立っている。

それは棺の鞄を背負い、大通りに戻ろうとした矢先の出来事だった。

今まさに金をせびられようとしている。が、一銭も持っていない。

どこにでもいるんだな、こういうやつ……。
メアリは無表情のまま無視して立ち去ろうとした。

「おい、シカトすんなよ!」

殴りかかってきた手を避けようとした。弾みで、大切な地図の紙が風に飛ばされてしまう。

「ああーーっ!!」

急いで手を伸ばすが、ペラペラと宙を高く舞って、無情にも星空の彼方へと消えていった。

「なにすんだよ!!」

怒りの形相を大男に向ける。

「うるせえ!さっさと有り金出しやがれ! おい野郎ども!こいつをやっちまいな!」

狭い裏路地のどこに潜んでいたのか、いかにもチンピラな男たちがこちら目がけてワラワラ飛び出してくる。

だが殴りかかってくるその手をいとも簡単に避けるメアリ。
相手の腕を掴み、バッタバッタとなぎ倒していく。

その様子を見て驚き、手出しもできずに青ざめる大男。

地面にどんどんチンピラたちが積みあがっていく。
そしてついには大男を残すだけとなってしまった。

ガタガタ震えだす大男。

「お、覚えてろよ~! コンチクショウ~!!」

涙目で走り去ってしまった。

「なんだったんだ? あのザコ……」

って、それよりも地図が! どうすれば――。

「そこな、おにいは~ん?」

後ろから声がした。
またか?と、げんなり嫌そうな顔で振り返るメアリ。

黒髪の着物姿の青年が立っていた。

顔形がとても整い、麗しく奇妙な色気を醸し出している。

一歩下がった後ろに、金髪で眼鏡の男性と長髪で背の高い男性が護衛のように付いている。

「あんたがメアリはん?」

「誰だ? 貴様?」

名前を呼ばれて思わず身構えてしまう。

「エドワードから電話で話しは聞いとるえ。メアリはん。
めちゃくちゃ目立っとるから、ひと目で分かったわ」

エドワード、と聞いて驚いた。
というか、やっぱり目立っていたのか。

青年は足元に転がっているチンピラたちに目をやる。

「この辺、物騒やから迎えに来たんやけど……必要なかったみたいやな♪」

にっこり笑顔を向けられた。

メアリは思わず、星空に向かって感謝の祈りを捧げる。

――おお、エド様、どうもありがとうございます!!

エドワードの姿が神々しく空に浮かんでいるかのように見えた。
同時に、「生きていますよ~!」と焦る声が聞こえた気がした。

「金が必要なんやろ? 立ち話もなんやし、住居に案内するからついてきい」

青年は言うと、護衛を後ろにゆっくりと歩き出した。

「あ……」
メアリは照れくさそうに呟く。
「ありがとう……」

なんだか感謝をする出来事ばかりだ……。
そう思いながら青年の後をついていく。

だがメアリを後ろに、青年は妖しく口元を笑ませていた。

「エドの言うてた通り、男前のおにいはんやな……」


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tag : 小説 オリジナル 創作

~星ワタリ篇~【夢現七光年】

列車が無事に駅に到着してガイダンスが流れる。

「終点、惑星・キングガイア~。 ご乗車ありがとうございました~。お客様、お忘れ物無きよう~」

ミュウを抱きながら、メアリは少し狭そうに列車を降りた。
辺りを見渡す。
レンガ造りの広々とした、見たところ普通の駅舎内だ。

「時空異邦者さん」

車掌がしんみりとした面持ちでそこに立っていた。

「ここでお別れですね」

「ああ。色々と世話になったな」

メアリは手を出す。
それに答えるように車掌も手を出し、ふたりは握手を交わした。

「そういえば、まだ名前を名乗ってなかったな。
俺はメアリ。
メアリード・ハイヴェルダルク・ウォン・ヴァレンシュタインⅠⅣ世だ」

「な、長いお名前ですね~。
わたしはエドワード・ウェイルズと申します」

「メアリで構わないぞ。 あんたは、エドでいいか?」

「あ……。 はい。でも……」

「う~ん。 あんたとはまたどっかで会う気がするんだよなぁ……」

難しい顔をして考え込むメアリ。
それを見て車掌は嬉しそうに笑顔を見せる。

「それでは、メアリード様。 またのご乗車をお待ちしていますね!」

帽子の前に手を添えて敬礼した。

手を軽く振ってから歩いていくメアリ。
その姿が見えなくなるまで、ずっと見送っていた。

「メアリード……メアリさん、かぁ……」

その場で立ち尽くしたまま、何故だか赤く染まっている頬に手を寄せた。

「かっこ良かったですねぇ~。
うふふ……。わたし恋に落ちてしまったかも~♪」

完全に目がハートになってしまっている。
一応説明しておくと、車掌エドは男性である。

メアリは背筋にゾクッと寒気が走った。
なんだ今のは? ミュウの風邪がうつったのか……?

考えながら、そのまま通路を明かりの見える方向へと歩いていく。
すると出口に着き、眩い光景が視界いっぱいに広がった。

それは機械で構成された超巨大都市だった。

地平線いっぱいに摩天楼のように高い建物が無数に立ち並んで、空中を鉄の乗り物がいくつも走っている。
どこもかしこも眩しい光りが溢れるように輝いている。

見上げたまま、あまりの驚きでその場に立ち尽くしてしまう。

たしかに、これなら太陽の光なんて必要ないな……。
ひとり、ため息をついた。



車掌エドに貰った地図を確認しながらゆっくりと歩いていく。

めちゃくちゃ広い街だな。
周りの奴らも人間と変わらなく見えるが……。

だが、チラホラと嫌な視線を感じる。
やはりこの世界では少し奇抜な服装なのか、異様に目立ってしまっている。
ミュウを抱いて歩いているせいもあるのか不審な目を向けられた。

まずいな……。
と、少し大通りを外れた路地裏に道を外す。
少し歩いてから荷物を降ろして考える。
あることに気が付いた。

この棺形の鞄、前よりもデカくなってないか……?
どうりでなんだか重いと――。

ハッとして、恐ろしいことが浮かんでしまった。

その棺の鞄は何故だかミュウの体が入るのに、丁度良いサイズの物に思えたからだ。

試しに少しだけ、とミュウを棺形の鞄の中に入れてみる。
体がぴったりと収まってしまった。

――!

恐怖で一瞬思考が停止してしまう。
それはまるで、ミュウを入れる為に作られたのではないのかと錯覚してしまうほどだった。

けど、このほうが安全だろうし……。
言っては悪いが、何より運ぶのがラクだ。

未だ眠りの国のお姫さまなミュウ。
呼吸も安定しているし、その表情から苦しくはなさそうだ。

あどけない寝顔を見つめながら、指先でそっと頬を撫でる。
優しく口元を和ませるメアリ。

「窮屈かもしれないけど、少しの間辛抱していてくれ」

そう言って鞄の扉を閉めた。



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tag : 創作 オリジナル 小説

~星ワタリ篇~【夢現六光年】

「時空異邦者さん~? 苦しいです~」

その声にハッとして抱き寄せていた腕を解いた。
何故だか顔を赤くしてしまう。

パラパラと胸に葉っぱが数枚くっついてしまった。
それは車掌の髪の毛の一部だった。

車掌の髪や肌を見て、ずっと気になっていたことを聞いた。

「あんたは人間じゃないのか?」

車掌は緑色の髪の毛を押さえながら答える。

「時空異邦者さんの言う人間がどのようなものなのかは解らないですけれど、
元々はわたしも貴方と同じようなヒューマンでした」

瞳が黒い悲しみに染まっていく。

「もうどのくらい昔のことだったか――。
この鉄道の仕事に就く前……。 わたしは軍の……実験体でした」

溢れ出しそうな涙をこらえて笑顔で話し続けた。

「わたしは失敗作なんですよ~。
なので捨てられてしまって、でも良い人に拾ってもらえて、仕事まで与えてくれて……。
だから、今はこうして笑うことができるんですよ~」

メアリは背筋をゾッとさせた。

「もしかして、さっきまでいた乗客たちも――」

「幾人かはそうかもしれないです……。
でも、元からそういった種族の方も多いですし~。見分けるのは困難かと」

「そう、なのか……」

「時空異邦者さん!」

車掌がとても心配そうな瞳を向けてくる。

「この世界には未だ戦争の後遺症が残っています。
正体不明の巨大な怪物が何処からともなく現れるのです!」

「は!? 怪物? なんだそりゃあ!?」

「とくに軍の者には気を付けてください!
軍は貴方達のような時空異邦者を捕らえて実験体に使うと聞いています!」

「実験体って何のだよ?」

「それは……。わたしもよく解らないんですけど。
たぶん、怪物を倒すための何かじゃないかな~?って……」

メアリは少し顔をうつむけてため息をついた。
オロオロしている車掌の頭にポンポンと手を置く。

「大丈夫だよ。
俺は、軍?とやらには捕まらないし、怪物もブッ倒してやる」

「そ、そんな無茶苦茶な~!」

「忠告はありがたく受け取っておくから、後は気にするな」

慌てふためく車掌を尻目に、窓の外に目をやる。
星空の中に、今までとは一段違った眩しい光が迫っていた。

それは、青く澄んだとても美しい惑星だった。

「もうすぐ終点です~」

「おお。 じゃあ、あれが――」

「はい。 惑星・キングガイアでございます」

初めて見るはずの情景なのに、どこか懐かしいような不思議な感覚にメアリは包まれていた。

ナイトもこの世界に来ているのだろうか……?
おそらくきっと、いや、必ず来ている。

……絶対に、探し出してみせる。



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~星ワタリ篇~【夢現五光年】

走り続けて乗客の大分少なくなった鉄道車内。

「それでは~、右も左も分からない時空異邦者さんのために~」

車掌は劇でもお披露目するかのようにステップを踏んで踊りだす。

「この世界について、少し解説いたしますね☆」

さらに横ピースでウインクを決めた。

車掌の取り計らいで、お腹が空いているだろうと駅弁を渡してもらった。
ご飯を貪りながら、メアリはそれを眺めていた。

ふむ、この駅弁とやらは中々イケるな……。

「右手に見えますのが、惑星・ジュピター。 続いて左手に見えますのが、惑星・ヴィーナス」

車掌は窓の外に見える惑星を手前から順に説明していく。
失礼だが聞いても理解不能なので、適当に相槌を打って受け流していた。

だが、次の言葉にメアリは我が耳を疑った。

「この世界に朝はやってきません」

――!?

「先に起きた戦争で太陽が滅亡してしまったと聞いています」

「なっ……!? じゃあずっとこのまま夜みたいに暗いままなのかよ?」

「はい……」

車掌は少しだけ悲しそうに微笑んだ。 そして窓の外に指を指す。

「あちらに一際大きな黒い惑星が見えますよね」

他の星々に比べて異常なまでに巨大で、邪気を放っているかのような恐ろしいモノがそこに在った。
驚きと同時に恐怖が体を襲った。

「まさか……。あれが太陽だとでも言うんじゃないだろうな?」

「そのまさか、ですよ」

その太陽は生物か何かのようで、ギョロリと蠢く不気味な瞳と目が合った気がした。
メアリは気分が悪くなり、口を押さえた。

「随分と驚かれるのですね。 逆にこっちがビックリしてしまいますよ~」

「そりゃあそうだろう。朝がこないなんて――」

言いかけてメアリは気が付いてしまった。
車掌は悲しみに沈んだままの瞳で、にっこりと微笑んだ。

「わたしは産まれてから一度も、太陽の光を見たことがありません。
時空異邦者さん、貴方はきっと――

当たり前に太陽が昇る、そんな世界からやってきたのですね」

その瞳にはうっすらと涙がにじんで見えた。
メアリは何と言えば良いのか、かける言葉が見つからなかった。

「大丈夫ですよ~。心配なさらなくても。
文明が発達していますので、よほどの辺境の星でない限り人工の光で不自由なく過ごせますから~」

そういうことを言いたいんじゃない……。

「キングガイアは巨大都市なので街の明かりもピカピカですよ~♪」

俺なんかのことよりも、もっと……。

「時空異邦者さん……?」

メアリは思わず車掌の体を抱きしめていた。
それが今、自分にできる精一杯の感謝の気持ちだった。

小さな声で呟いた。

「ありがとう」


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~星ワタリ篇~【夢現四光年】

乗車確認から帰って来た車掌はメアリと向かい合うようにして席についた。

「悪いな」

「いいんですよぉ~。仕事もひと段落付きましたし、次の駅まではまだまだありますし」

ミュウに温かいスープと風邪薬を飲ませてくれ、今は毛布にくるまり眠りについている。

見知らぬ地なので悪い気はしたが、念のために毒見をさせてもらったから大丈夫だろう。

「それで、ご質問とは一体どのようなことで?」

「そうだな……じゃあまず、この列車はどこへ向かってるんだ?」

「太陽系に沿って進んでおります、終点は惑星・キングガイアになりますけど」

「この列車は宇宙空間を走ってるのか?」

「もちろん!走っていますよ~。 この鉄道はもう何百年も昔から♪」

「……惑星・キングガイアってのは何のことだ?」

再び引きつってしまいながらも、なんとか平常心を保ちながら聞くメアリ。

「お客様~? もしかして~」

車掌さんは目を細めてメアリをのぞきこむ。

「時空異邦者じゃありませんか~?」

「時空異邦者?……なんだそれは?」

「この世界に迷い込んだ者、とでもいいましょうか。 最近増えていましてね。

突然、時空の狭間のような所から現れるのですけれど。

それが皆ヒューマンのような姿をしているらしいです。 わたしはまだ一度も出会ったことがないのですが」

聞きなれない言葉だが、もしかすると自分たちはそれなのだろうか。と考えてしまう。

「説明はしづらいんだが……俺たちは奇妙な穴みたいなものに吸い込まれた、と思う。

それで、いつの間にか見たことのない場所にいて――」

「それじゃ、時空異邦者さんで決まりですねぇ!」

車掌さんはにっこり笑ってメアリの両手を握る。

「わたし、一度会ってみたかったんですよぉ~♪」

「いや、まだそうと決まったわけじゃ……」

「やっぱり外見はヒューマンの方と変わりありませんね。服装は少し奇抜かも~?」

嬉しそうにジロジロとのぞきこまれて少し参ってしまう。

「なあ、ここってみんなあんな奴らばっかりの世界なのか?」

メアリは再び乗客に聞こえないように小声で話す。

「そんなことありませんよ。 この世界にはヒューマンの方も沢山いらっしゃいます。

ただ、この列車に乗客してくるのは少し珍しいかもしれませんね……」

「……?」

一瞬だけ車掌に暗い影のようなものが落ちた気がした。

だが、すぐにまたニコニコ笑顔に戻った。

「行き先は決まっていないですよね?」

「あ、ああ」

「ん~、それでしたら~。 やはり終点のキングガイアまで向かうのが良いかもですね~。

あそこならヒューマンの方もいますし、お金も借りられる所もありますしね~」

「金が借りられるのか!?」

その言葉に飛びついた。

「ええ、わたしの知り合いなんですけど、ある条件を満たしていればOKという豪快な方でして~」

車掌さんが更に顔を近づけてきた。ジロジロとまんべんなく体中を見られる。

「ん~。お客様なら問題ないかと~♪」

「なんでも構わない。金が手に入るなら助かる」

この際、手段は選んでいられない。

ヤミ金融だろうが博打だろうが、自分には慣れたことだ。

それに、金が無ければ宿にも泊まれないし、ミュウを守ることもできない。

「それでは、着いたら直ぐに目的地に向かえるように地図を用意しておきますね」

「何から何まで、済まないな」

車掌さんはお辞儀をすると別の車両へと歩いて行った。

窓の外に目をやり、ふと考えてしまった。

そういえば自分は人間ではないじゃないか。 ふっとため息をつく。

……俺は馬鹿なのか?

けれど、今はこのありがたい恩に感謝していよう。

一抹の不安が心をよぎる。が、きっと大丈夫だと、自分に言い聞かせた。





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~星ワタリ篇~【朧月夜・夢現参光年】

蒸気機関車はゆっくりと走りはじめ、空を登って行く。

窓の外には星空が広がり、いつの間にか景色は宇宙空間へと変わっていた。

驚きで、引きつるメアリ。

と、とりあえず、席に座ってミュウを休ませなければ。

そう思いながら、車両の扉を開けたメアリの目に、さらに驚くべき光景が飛び込んできた。

――それは乗客たちの姿だった。

タコのようなイカのような生物たちに、動物たちが二足歩行をして、言葉を交わしている。

人間のように見える者たちは、耳が動物か何かのようであったり、頭に角のようなものが生えている。

顔から滝のような汗が流れるメアリ。

俺は夢でもみてるのか? それともこれはまだゲームの続きか?

何はともあれ、たまたま空いていた一番後ろの席に腰を落とすメアリである。



「乗車券のご確認を致します」

その声にビクッとした。

前のほうの乗客が、車掌に乗車券を切られていた。

――まずい!

焦るメアリ。

自分の服の中をあさる。が、乗車券はおろか一銭すら持っていない。

「あの、乗車券のご確認を……」

慌てているうちにメアリの目の前に車掌がきてしまった。

それはさっき窓から声をかけてくれた車掌さんだった。

顔が真っ青になってしまうメアリ。

と、車掌さんはメアリの腕に抱かれていたミュウのことが目に入った。

「――その少女は、ご病気なのですか?」

口ごもってしまうメアリに、車掌さんはにっこりと優しい笑顔を向けた。

「どうぞ良い旅を」

お金も渡していないのに、既に乗車確認がなされている券を二枚渡された。

ん? 大人一枚に……小学生一枚?

思わずミュウの顔を見てしまう。

……冗談、だよな?

……。

「お、おい。あんた」

次の車両へと向かおうとする車掌を、メアリは引き止める。

「はい?」

「いいのかよ? こんなことして」

受け取った乗車券を握りしめて、他の乗客に聞こえないように小声で話す。

「大丈夫ですよ? だって、無いのでしょう? お金♪」

よく見ると、その車掌は顔の皮膚がまるで樹木のようだった。

髪の毛は緑色の葉か草である。

体からは所々に小枝が生えて、よく見ると小鳥まで止まっていた。

ただの人間ではないことは明らかである。

「わたしもこの道長いですので、そういったお客様には慣れていますしねェ~」

「あのよ、あんた、もしよかったら……」

「はい~?」

他に物をたずねる者などどこにもおらず、藁をもつかむ気持ちで切り出した。

「いくつか質問させてもらってもいいか?」

車掌さんは驚いたように瞳を丸くした。





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~星ワタリ篇~【朧月夜・夢現弐光年】

周りの景色が何も見えないほど激しい吹雪の中をメアリは歩いていた。

どさり、と後ろで音が聞こえて急いで振り向く。 ミュウが雪の中に倒れ込んでしまっていた。

焦ってミュウを抱き上げる。 顔色がかなり悪い。体も冷え切ってしまっている。

「くそ……っ」

何故こんな事態に陥ってしまっているのか――。 それは数時間前の出来事だった。



ミュウを背中に抱えながら再び底なしの崖を下りていると、ぽっかりと小さな穴のような明かりが見えた。

ついに地底まで辿り着くことができたのかと歓喜しようとした、次の瞬間。

明かりはどんどん大きくなっていき、メアリとミュウを包む。 そのまま飲まれるように吸い込まれて落ちていく。

そして二人の体が地べたに投げ出された。

「ミュウ、大丈夫か?」 「ん……」 「なんだ……ここ……」

見ると、辺りは一面の雪景色だった。

木がうっそうと茂っている。空は暗い。夜だろうか。

「もしかして底までたどり着いたのか?」

後ろを振り返り空を見渡す。どこを見ても今自分たちが落ちてきたはずの、崖や穴がない。

シンシンと降り積もる雪の夜空だけが広がっていた。

とても寒い。 ミュウは小さく体を震わせた。

遠くのほうにポツポツと幾つかの明かりが見える。 このままここにいても仕方がない、か。

メアリはミュウの手をとり、明かりの方角へと歩き出した。



――そののち、急激に風が強くなりはじめ、視界が悪くなり吹雪へと変わってしまった。

それがこれまでの経緯である。

ああ……。早くどこかに休める場所を探さなければ……。

と、そこに、どこか遠くのほうから汽笛のような音が聞こえてきた。

しだいに音は大きくなり、何かが近づいてくる気配を感じる。

「……!?」 とっさにメアリは身構えた。

空の上のほうから有ろうことか、蒸気機関車が飛び、こちらに近づいてくるのが見えた。

フワッと一時の間、その場だけが何か暖かいものに包まれた気がした。 それと同時に吹雪がおさまっていく。

いつの間にか周りの景色は、どこかの駅のような場所へと変わっていた。

大きな汽笛を鳴らし煙をはきながら、目の前に蒸気機関車が降りてくるようにして停車した。

ミュウを抱き上げたまま、メアリは驚いて立ちつくしてしまった。

辺りは白い霧のような物に包まれてよくは解らないが、客らしき人たちが乗り込んでいく姿が見えた。

「お客様。乗らないのですか?」

呆然としていると、窓から車掌さんが声をかけてくれた。

我に返るメアリ。 眉間にシワをよせる。が、このままここにいても埒が明かないことは明確だった。

「ご乗車ありがとうございます」 にっこりと暖かい笑顔を向けられた。

しばらくして、メアリは自分が乗車券もお金も持っていないことに気付くことに、時間はかからなかった。




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~星ワタリ篇~【朧月夜・夢現億光年】

この世界には伝説がある。

銀河のどこかに存在するという空中都市、ネオ・ネヴァーランド。

太陽が闇に飲まれし時、その地から黄金に輝く天使が舞い降りて滅亡から救ってくれるであろう…。




銀河系を翔る黒い龍、戦艦ブラックドラグーン。

コツコツとジョッキーブーツを鳴らして歩く。黒い軍服を翻すと、少しクセのある銀の髪がサラサラと風に揺れた。

銀河連邦軍・参謀長長官、デットスター将軍。

まだ青年と呼べるほどの若者だが、重くとても強い瞳をしている。

……必ずこの世界に太陽の光を取り戻してみせる。そのためならどんな苦しみさえも厭わない。

我はそう誓ったのだ。

「デットスター将軍! 何か未確認物体が近づいて来ます!本艦上空から――」

「上空だと? 軍以外は飛行禁止区域であろうが。海賊船か?」

「いいえ、もっと小さいです。 何か人のような姿をした――。物凄いスピードでこちらに向かってきています!」

「まずい、このままでは衝突する!」

操縦士をその場に残し、将軍は急いで戦艦の上へと向かった。

風が強く吹いている。暗闇の中で、流れ星のように眩い光を放ちながら、その物体はすぐ近くまで迫ってきていた。

が、急に速度を落とし、ふわりと人の姿をあらわにした。

将軍の傍にゆっくりと降りてきて着地をする。体は黄金色に光っている。

「……貴様は何者だ?」

それは華奢な体に金の髪、王族の少年のような服を身にまとっている。

「天使、なのか?」

問いかけに、碧く大きな瞳がギョロリと開いた。

「ワタクシの天使……いえ、女神はミュウ様だけ……。――誰にも邪魔はさせない!!」

言い放つと、ぐらりと戦艦の上から飛び降りた。

再び人形のように瞳を閉じる。 将軍も後を追い、駆け出して手を伸ばす。 だが届かない。

そのまま共に猛スピードで落下していく。体が雲に覆われた。

まずい。地上が近い。 何としてでも――。

懸命に腕を伸ばす。 指先が少年の髪に触れそうになる。 瞬間――。

雲を抜けて、地上の煌びやかな光りたちが見えた。

そこには美しい景色だけが広がっていた。 驚いて辺りを見渡す。

少年の姿はどこにも無かった。

「……消えた? だと?」




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~星ワタリ篇~【朧月夜・夢現壱光年】

終わりなど来ないかのような真っ暗な谷底……。

自らの意思で落ちていったナイトを探すために、メアリはミュウを背中に抱えてゆっくりと下っていく。

ところが、いくら進んで行っても一筋の明かりさえ見えない。

代わりに、崖の途中で洞窟を発見することができた。 ミュウの体調も考えてひとまずはそこで休むことにした。

ただの横穴のようで奥には道も続いていない。人がいた形跡も無い。

メアリは暖をとるために火を起こす。

「あのね、メアリ……」

メアリの傍にミュウはちょこんと腰をおろした。

「ナイトはきっと生きているよ」

……。

「ミュウにはわかるの」

祈るようにミュウは虚空を見つめた。

「だって、ミュウは今こうしてここで生きているから」

――。

とても綺麗な笑顔を浮かべているのに、メアリには何故だかそれがとても恐ろしい何かに思えてしまった。

「だからナイトも、この世界のどこかで生きているよ」

「……だろうな。あいつは殺しても死なない。それに」  「え?」

「ナイトならミュウを守るために、この世界の神でも殺すだろ」

自分でもなんて恐ろしいことを口にしているのだろうと思えた。

けれどきっとこれがミュウの――、いや俺たちの【創造】するナイトだ。

「だから、みつけよう。俺たちふたりで、ナイトを」

「うん!」



「こっちにこいよ」

急にメアリはコートのボタンを開けて促す。 ミュウはビックリして真っ赤になり固まってしまった。

「阿保か! 冷えるからもっと傍で眠れって言ってるんだ!」 メアリもつられて赤くなる。

「だいたい俺はお前らの保護者なんだし、ミュウに何かあったら俺がナイトに殺される」

メアリは強制的にミュウを自分の胸に抱き寄せた。

ほんのり煙草の匂いがして、あたたかかった。 「ありがとう……」

ミュウもメアリの胸にそっと顔をうずめる。自然と涙が頬をつたっていた。

ナイトがみつかるまでは代わりに――。

メアリは棺型の鞄に目をやる。

ナイトメア・メイズの駒は一回休みの状態のまま止まっていた。

「俺がミュウを守ってみせるよ」




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【トキワ】のメッセージ。

ふわぁぁ~~。眠いなぁ。

んん……?

なぁんだ、まだ夜中かぁ……。

変な時間に目が覚めちゃったなぁ。

まぁいいや。もうひと眠りしよ――って、……ひゃああ!?

ビックリしたあ。

もう、いきなり僕のベットの中にもぐりこんでくるなんて……。

体がこんなに冷たいじゃないか。

しょうがないなぁ。

さみしくなっちゃったの?

ほら、いい子だから。泣かないで。

そんなに隅っこにいたら冷えるでしょ。もっとこっちに来なさい。

…………むぎゅ。

……。



……うう~ん。

もう朝かぁ。

んん……?あれ、あの子……。

いなくなってる。

まったく、しょうがないなぁ。

ぐずってるから、なだめてあげたのに。お礼も言わないなんて。

捕まえて、とっちめてやる。

――と、思ったけど……。

あれ??

この子じゃないし、その子でもないし……。

おかしいなぁ。

どこにもいないぞ?

……。

そういえば、あの子、見たことない子だったような……。

まさか、この孤児院に古くから伝わる、幽霊、とか?

あはは。なんて、そんなことあるわけないじゃないか。

夜中だったし、寝ぼけてたのかなー。



でも……。

また僕のところに来たら、抱きしめてあげよう。

だって僕は、この孤児院の一番上の、お兄ちゃんだからね。

ここにいる子はみんな、僕の弟と妹なんだから。

たとえそれが、ちょっと変わった子だったとしてもね。


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