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闇王子と人形姫の不思議な鏡迷宮【夢現九時】

シンとする静寂が突き抜ける教会の中。

アンジェラは一歩下がりミュウから身を引くと、ため息をついて窓のほうへ目を向けた。

濃いピンクの髪がふわりと揺れる。正気を取り戻した、いつもの綺麗なアンジェラがそこにいる。 

「外が随分暗いのね……。今日はとても冷えるわ……」 少し疲れたような虚ろな瞳で、

言うと、ゆっくりと聖母様の像が祀られている教壇へと歩いていく。

周りに沢山飾られているキャンドルに手を触れる。 傍に用意されていたマッチを擦り、火を点ける。

灰色の部屋の中に、そこだけが温かくオレンジ色の灯りが燈った。

次々と沢山、灯を燈していく。教会の中が軟らかな光りに包まれる。

ミュウはそれを不思議そうに、ぼんやりと見つめていた。 アンジェラの瞳の中も優しい光りで潤んでいた。

部屋の中に、三人の大きな影が出来てユラユラと揺れる。

ミュウの影は無邪気な子ウサギのように。 ナイトの影は壊れた操り人形のように。

そしてアンジェラの影は巨大な蜘蛛を模り、ぞっとするほど恐ろしく黒くざわざわと蠢いている。

すると、アンジェラはキャンドルを燭台ごと手につかむ。 どうするのかと思っていると、今度はそれを床に落とす。

「アンジェラ……さん?」 何が起ころうとしているのか、ミュウは驚いた。

……教会の中に炎が燃え移った……。

「ミュウちゃん……ナイトくんを連れて今すぐここを離れなさい。……早く」 瞳を細くして言い放った。

「ア……アンジェラさんも、いっしょに……」 急に遠い存在に思えて怖くなる。

「駄目よ……それは出来ないの」 寂しげに首を横に振る。

アンジェラはゆっくりと近づき、手でミュウの頬にそっと触れる。

……その手がとてもとても、冷たい。

「分かるでしょ……?アタシはもう、あなたたちと一緒にはいられないのよ……」

とても生命が感じられない……。硬くて冷たい……。まるでただの機会の塊のように。

それがとても哀しかった。 その言葉で分かってしまった。

アンジェラはここで独り、自害するつもりなのだ……。

ナイトは何も言おうとしない。未だ疑惑を抱いた鋭い視線のまま、ただそれを聞いていた。

「アンジェラさ……やだよぅ……ふえぇ……っ」 ミュウの瞳から涙がぼろぼろ溢れだす。

「ミュウちゃん……そんなに泣いては駄目よ……」 アンジェラは優しく頬を拭ってくれる。

「女の涙はね、好きな男を自分に惚れさせるための武器なのよ……だから、その時の為にちゃんと取っておきなさい……」 悲しい。けれど、

優しく微笑んでくれる。 まるであの冷たい雨の日に迎え入れてくれたような温かさだった。

だからこそ胸の奥が痛んだ。 これが最後の別れになるであろうことが、強く思い知らされた。

「早く行って!――アタシが正気を保っていられる間に!早く!」 アンジェラは最後の力を振り絞って叫んだ。

炎がどんどん広がっていく。もうためらっている時間は残されていなかった。

苦しくて悲しくて、涙が溢れて止められない。

けれど、その涙を振り切って立ち上がる。 後からハートさんも傍に付いてくる。

うつむいたままの左腕に杖を支えにしたナイトを、かばうようにして。ぎこちないけれど、ミュウは寄り添う。

ミュウは振り向かなかった……。

この世界で……、こんなになってしまった世界で……、犠牲にしてしまったアンジェラのためにも、

前を向いて、進んで行かなければならないと思ったから……。

重い扉に手をかけ、隙間が生まれる。 光の無い灰色の世界に、逆光が差し込んだかのように思えた。

そして、教会の外へと飛び出して行った――。

アンジェラは笑顔だった。いつものように優しく二人を見送った。

……その頬から涙が伝っていたことに、二人は気が付くことはなかった……。

炎が教会の中を包んでいく。建物が段々と崩れだす。

「あーあ……史上最悪のクリスマスになっちゃったわねぇ……」 独り、ため息が漏れる。

床に無造作に置かれていた赤いサンタクロースの帽子に気が付いて、手に取る。

「でも、教会でドッカーンっていう最後も、派手でアタシらしくていいかしら……ね」

アンジェラは静かに、瞳を閉じた……。



レンガ造りの家が立ち並ぶ道。 片隅の古びた小屋の壁に、倒れるようにして座り込む。

「ナイト……だいじょうぶ?」 ナイトはミュウのほうを向いてくれない。 顔を見せてくれない。

「……これが、貴女の【答え】なのですか……?」 「――え?」

ナイトの言っていることがよく分からない。 次の言葉に驚いた。

「……ミュウ様、ワタクシをここに捨てて行ってください」


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