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不思議な鏡迷宮・神アカシ編・【ページ1】

もしも、どんな願いでもたったひとつだけ叶えられるとしたら、貴方は何を望みますか?

それとも何も祈りませんか?



――きっとこれは人類という存在がこの世に生まれてから、すでに始まっていたことなのだ――。

ウサギのように臆病で、愛らしい瞳の少女が泣いている……。あんなに楽しかったのに。幸せだったはずなのに。ずっと一緒にいたのに。

あの子は誰だっただろう。 ……今はもう、思い出せない……。



「トキワちゃーん!早く起きないと遅刻しちゃうよー?」

部屋のドアをノックする音。

僕、【輝神時翔】(カガミ・トキワ)はいつものように幼馴染の【白鐘亜梨子】(しろがね・アリス)の声で起こされた。

「……大丈夫だよ、まだ目覚まし鳴ってないし。 昨日遅くまでバイトして、徹夜もしたから……。眠い……」

「目覚まし鳴ってないって、何時にセットしたの? もうけっこうかなりヤバイ時間だよ?」

「――え?」

目覚まし時計をわしづかむ。すでにベルは止められていた。飛び起きると、歴代の記録を塗り替える速さで身支度を整えた。

僕は幼い頃に両親を亡くして、ムーンチャイルドと呼ばれる修道院で暮らしている。 礼拝堂に出ると他の子たちはもう学園へ行ってしまっていた。

「トキワちゃん、髪の毛寝ぐせついてる!スカーフもぐちゃぐちゃ!ちょっとこっち向いてっ」

実のところ小さい頃は気が弱くて泣き虫で、恥ずかしながらイジメられているのをよくアリスに守ってもらっていた。そのせいか今でも頭が上がらない。

「べつに毎日起こしに来なくてもいいのに……」 「だって毎日起こしに来ないと毎日遅刻するでしょ! トキワちゃんにはボクがついてないとダメなんだからっ」

アリスは女の子なのに自分のことをボクと言う。 家が近所にあって、昔からよく一緒にいたせいか喋り方がうつってしまったのかもしれない。お互い。

「わかってるの? トキワちゃんはあの学園の希望の星なんだよ!」 「大丈夫だよ。学園ではそれなりの対応してるから」 「そういうことじゃなくって……」

アリスを無視して進む、廊下でシスターと擦れ違った。手に二人分の食事を持っている。

「シスター、それって……」 「ええ、ミュウちゃん部屋にいなかったから、またナイトくんのところだと思うの。朝ご飯、持って行ってあげようと思いまして」

僕は地下室へと続く階段へ視線を送った。

「シスター、僕が留守の間はあのふたりのこと、よろしくお願いしますね」

シスターは優しく微笑んでうなずいた。 「行ってらっしゃいませ」

「トキワちゃーん!待ってよお……。いくらボクが女子の中で足が速いっていっても、トキワちゃんには敵わないよう……」

「しょうがないなぁ」 「えっ? ひゃああっ!」

アリスの手を引いて、僕は桜並木の道を走っていく。 高等部、三年目の春。

そっと自分の胸元に指で触れる。まだそこには、あの日に神父さまがくれた十字架がある。そのことに、ホッと胸を撫で下ろした。

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