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不思議な鏡迷宮【神アカシ篇】ページ12

僕はゆっくりと、少年のほうへ歩み寄って行く。

「よ……っ寄るな! 来るなぁ!」  地面に這い蹲った状態のまま後ずさる。  若頭はそれを静かに見つめていた。

少年の傍まで到達すると、膝を折って屈み込み、満面の笑顔を向けた。

「ねえキミ、名前はなんていうの?」

その場にポカンと拍子抜けした空気が流れた。 少年も若頭もキョトン顔だ。 でも構わず、僕は話しを続ける。

「キミはどこから来たの? その服カッコイイね」  少年はうつむいて黙りこんだ。

「この学園に苺を生やしたのってキミだよね。 僕たちは、ただそれを止めてほしいだけなんだ。そうすればもう何もしないから」  頑なに口を開こうとしない。

「じゃあ、わかった。 その仮面だけでも外してくれないかな? おにいちゃん、キミのお顔が見たいなぁ~」  後ろで引きつる若頭。

「ゾーーーヨーーー!! ゴットファーザーよ!何をしておる! さっさとその少年を殺せゾヨ!!」  ついに痺れを切らせた。

「五月蠅いよ、若頭。 ちょっと黙っててくれる? でないとキミから先にお陀仏させるよ?」  笑顔のままそう言うと、若頭は目を泳がせて顔を逸らした。

「ねえ、キミ……どうしてこんな悪戯するの? もしかして何か理由があるの? 止めてくれないと、僕はキミを無理矢理にでも停めないとならないよ……」  今度は僕のほうが俯いてしまった。

「……ワタクシは……ナイト……」  「――えっ?」

「ネオ・ネヴァーランド王国、第Ⅳ王子……。 リ・ナイト・リトルロードネヴァーと申します……」

僕は驚いてしまった。  「それがキミの名前?」  少年が頷く。

「苺を生やしたのは、姫君との約束を守るため……。 もう一度ここで逢おうって約束したから……姫は苺が大好きだから……苺を食べると皆、笑顔になるから……」

「ゴットファーザーよ、この人形はもう……」  無言のまま答えた。

「既に壊れているのではないのか……?」

そう、壊れている……。見ていて痛々しかった。

【ネオ・ネヴァーランド】というのはこの街で有名なテーマパークの名前で、【リ・ナイト】というのもそのテーマパークのウサギのキャラクターの名前だ。

「お願いデス! 助けてください!殺さないでっ!」  少年が僕の脚にすがりつく。

「やっと、やっと自由になれたのデス……光となって世界を救うのだから……姫と、もっともっと遊ぶのだもん……」

何のことだか解らない、僕には全て意味不明なことだった。 けど……。

仮面の下から、涙が溢れて頬をつたう。止まらない。 その少年の身体が、やわらかくて温かいのだ。

……人形なのに……。

「お願い、助けて……お兄ちゃん……」

その言葉で、脳裏に弟のナイトの姿が過ぎった。 ――ナイトと同じ名前――。

「ゴットファーザー! 騙されるな!!」  僕は地面に膝を付く。 そして……。

……少年の身体を、抱きしめた……。

「大丈夫だよ、おにいちゃんもう怒ってないから。 だから泣かないで」  笑顔で優しく囁いた。

一瞬、静寂に包まれたような気がした。 が――。

「甘い子……デスね」

少年がニヤリと口を歪めた。 瞬間、腹部に強烈な痛みを感じて、後ろに弾き飛ばされた。

少年はちぎれた自分の左腕を掴むと、巨大な満月を背景に翼を広げて、再び星空の彼方へと消えていった……。

腹部を押さえながら、ため息をつく。 アザになりそうな程度で、大したことはなさそうだ。

「良かったゾヨか? これで……」

「ああ、いいんだ……。 もしあの場であの少年を殺していたら、僕は絶対に後悔する」

「殺さなくても後悔するかもしれぬゾ」  「それでもいいさ」  「……主には少し甘い所がある。 余はそういった考え方は嫌いゾヨ」

若頭は自分の胸元を見る。腕に抱いていたウサギがモソモソと動いていた。  「そのウサギ、生きてたの!?」

「気絶していただけゾヨ」  「でも、あの時は死んだって……」  「こうしてこちらの術中に収めておけば、ヤツはまた必ず現れるゾヨ。 ウサギを取り返しに」

「……それって、僕があの子を逃がすって分かってたってことじゃないのか?」

若頭は頬を赤くして、背を向けた。

こいつは、本当にひねくれてるヤツだ。 まあ、こういう所は嫌いじゃないけど。 もしかするとお互いに、同じようなことを思っているのかもしれない。

僕たちは満月の浮かび上がる夜空を眺めた。 どこか遠くで、夜の魔術師のベルの音が響いている気がした。

……チリン……チリン……。  「むふふふ……♪」



翌日――。

朝。 学園に来て見ると、苺畑は消え、まるで今までのことが嘘のように、元のグラウンド場へと戻っていた。

それでもまだ周りに苺は沢山生えているけど、邪魔になるほどのものじゃない。 これで生徒会費の赤字も解消されるだろう。

とりあえず、一件落着、か。 それを眺めながら、清々しく伸びをした。

きっとあの少年も、そんなに悪い子じゃなかったんじゃないかな。 そう思うと自然と顔が綻んだ。

……でも、この時の僕は、まだ何にも気が付いてなかったんだ。

……夜の魔術師の本当の秘密に……。

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