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追憶~【ユメノ・ナイト】~5

ある日家の中で、ガタガターーーン!!と何かが崩れ落ちるような激しい音が響いた。

音のしたほうへ向かうと、彼女が廊下で倒れていた。

「ミュウさん!?」

私が呼んでも彼女は起き上がろうとしない。苦しそうに呻くだけだ。

息が荒い。

震える彼女の体がどんどん冷たくなっていく。

……どうすれば、どうしたらいいのか……。

私は途方に暮れ、彼女の周りをうろつくことしかできない。

どうやら彼女は体が弱いらしかった。

何をするにも何時でも、人よりもゆっくりとしたペースで物事を進めていった。時々発作の様なものが起こり、
つらそうにしていることもあった。

そばにいるだけで、私にはどうすることもできなかった。

そう……、ぬいぐるみである私にできることなど何もないのだ。

―――『貴方を守れないこんな体なら、いらない』のに……。

私は気が付いた。いや、思い出した。

今まで誰にも見せたことのない、使ったことのない不思議なチカラが自分に宿っていることを。

本当はわかっていたのに、わざと使わなかった。

少しだけ迷った。

だが、今使わないでいつ使うというのだ。

使えばもう此処には居られなくなるかもしれない。それでも構わない。

「少しルール違反かもしれませんが、許してください……」

私は【誰か】に向かって呟いた。

そして、彼女の唇にそっと、くちづけを交わした……。



彼女の部屋。

私は彼女をベッドに運んだ。

「……んっ……」

気が付いたのか、彼女が身じろぎして目を開いた。

私を見つめて、

「……だあれ……?」

私はにっこりっと笑ってみせ、

「ボンジュール、ミュウさん」

「ナイト……?」

「ハイ」

……私はぬいぐるみではない姿になっていた。

体は大きく。手足も長い。全く別の外見だ。それはまるで……

「ナイト……人間だったの……?」

驚くかもしれない、信じてもらえないかもしれない……。だが彼女は虚ろな瞳のままで、

「天使みたい……」

サラサラした金色の髪が、そう見せているのだろうか。

「それとも王子様……?ミュウのこと、むかえにきてくれたの……?」

……彼女の言葉に、逆に驚いてしまった。

「誰かがむかし、おしえてくれた……。いい子にしてたら王子様がむかえにきてくれるって……


彼女の顔が苦痛に歪む。

引きちぎれそうなくらい強い力で毛布を握り締める。

「くるしいよ……もうここにいたくないの……。ナイト……」

私に触れようとしているのだろうか。震えながら必死に手を伸ばしてくる。

「つれてって……」

その言葉がなにを意味しているのか、

言わなくても分かってしまった……。

見ていたくなかった。見ていられなかった。

痛々しい彼女の手をそっと握り締めた。

柔らかくてあたたかく私の体を包み込んでくれた、その手が……

こんなにも細く小さいなんて。

笑顔を見せて

私の名前を呼んで

抱きしめてほしいのに

……彼女の体から、いつもの甘くていい香りがしなかった。

「残念ですが、ワタクシは天使でも王子様でもありません」

彼女の瞳が暗く沈む。

「ワタクシはとても不思議なぬいぐるみです」

彼女が唇を噛み締める。涙が溢れて毀れる。

私は優しく、そして強く、続けた。

「……ですから、こうしてずっとお傍で貴方をお守りします……」



……我ながら、全く辻褄の合わないクサイ台詞だったと思う。

けれど彼女は泣き疲れると、ひと時の眠りに就いた。

その時、頬に静かにくちづけしたことを……彼女は知らない。



―――そうして魔法は解けた。






◆つづく◆

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