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闇王子と人形姫の不思議な鏡迷宮【夢現始時】

――それは、どこの世界の何時の時代での出来事だったのだろうか。

今はまだ、定かではない……。



春。 桜の舞う季節。

修道院。 近くで鐘の音が聞こえる。ステンドグラスの窓から神々しく光が差しこんでいる。

講堂の椅子に幼い少年がひとり、うつむいて座り込んでいた。

背中で、少年の体にはまだ大きそうな新品の黒いランドセルがピカピカしている。

それを見つけた、黒く裾の長い服を着た教団の一人がすぐさま傍に寄る。

「これ、まだ学校へ行っていなかったのかね、悪い子だ」

その声に、今にも泣き出しそうな顔を上げる。少年の黒に近いこげ茶色の髪が微かに揺れた。

「神父さま……」

目の前に立っていた声の主はとても優しく、まるでサンタクロースのおじいさんのように微笑んでいた。

「もう小学校の入学式が始まる時間だろう。早く学校へ行かんと、今日のおやつは抜きじゃぞ? トキワ」

トキワと呼ばれた少年の制服の胸元には、学園のネームプレートが付いている。

【輝神時翔】―ヒカミ・トキワ―。1年A組。

彼はこの修道院で養護されて生活している、孤児なのだ。

トキワが自分を抱くように、両腕で体を押さえる。

「神父さま……僕は学校へは行かないほうがいいと思うんだ……」

「それは、キミが泣き虫で学校へ行くとイジメられるからかね?」

神父様は少し悪戯に言い、少年の背丈に合わせるように、かがんで顔を覗き込んだ。

「ちがう……そうじゃないんだ……僕は……」

トキワの瞳が暗く沈む。

――微かな記憶。 忌々しい黒く紅い世界。

少年は今よりもとても幼くて、地べたに座り込んでただ泣いていることしかできない。

すぐ傍で男性と女性が倒れている。辺りは血の海となっていた。

少年の体も紅く汚れている。

…………。

「神父さま……僕をここから出さないで……!!教会の暗い奥の部屋にずっと閉じ込めておいて!! そうじゃないとまた悪いことが起きちゃうよ!!」

トキワが膝を抱えて、顔をうずめて泣きじゃくる。 神父様はそんな少年の隣りにそっと座り込んだ。

「ワシにはそんなことはできんよ。 神様に怒られてしまうからのう」

目線の先には、優しく微笑み赤子を抱く、聖母様の像。

「神様なんて――」

「そんなことを言ってはいけないよ」 言いかけたトキワの口元を、人差し指を当てて躊躇する。

神父様は静かに、微笑むようにため息をつくと、前を見据えて話し始めた。

「……トキワは、この街の古い伝説を知っているかね?」

「伝説って、もしかして……【ナイトメア・メイズ】のこと?」

「おや、もう知っていたのか」

「うん……寮の子たちがよく噂してるから」

それは、どんな願いでも叶えられるという不思議な世界の神様の物語りだった。

「もし、そんな神様に逢うことができたら、そんな力を手に入れることができたなら……トキワは何を願うかね?」

「僕は……」 突然の問い掛けに口ごもってしまう。

けれど、答えは決まっていた。

「僕は何も願いません……」 袖で涙を拭き、はっきりと強い瞳で前を見つめて言った。

「僕は今、この世界で、自分の力で、真実の幸せを叶えたいから」

――だってきっとそれは本当の幸せじゃないから。

「だから、僕は何も願いません」

「フォッフォッフォッ、強い子じゃな」 笑ってトキワの頭を撫でる。

「それだけ強い意志があるなら大丈夫だ」 言うと、首に提げていた十字架のネックレスを外す。

「これをキミにあげよう」 そしてそれを手に差し出してきた。

「えっ? これって神父様がいつも使ってる十字架だよね? もらえないよ!」

「いいんじゃよ、ワシは予備をたんまり持っているからの」

フォッフォッフォッと笑いながら服の裾をめくって見せてくれた。中には大量の十字架がくくり付けてあった。

「それにいづれキミに必要になる」

「え?」 なんでもないよ、と神父様は笑った。

「トキワ、それをいつも肌身離さず付けていなさい。そうすればそれは必ず、キミを悪いことから守ってくれるよ」

神父様は十字架を首に掛けてくれる。

「うん……ありがとう神父様」 トキワは十字架を、ぎゅっと胸に抱いた。

「神父様! 僕、学校へ行って来るよ!」 そしてようやく憑き物が落ちたような笑顔を浮かべると、勢いよく椅子から立ち上がった。

手を振ってから駆け出す。 その後ろ姿を、神父様の優しい笑顔が見送っていた。

空を見上げながら走っていく。 満開の桜並木の道もトキワを祝福してくれているように思えた。

この時、トキワは誓ったのだ。

この先どんなに辛い、乗り越えられないほどの困難が待ち受けていたとしても、それが自分の選んだ進むべき道なのだと、

決して諦めたりしないと、心に……。

この時はまだ、これから自分に降り掛かることなんて予想もしなかったから――。

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